【造血幹細胞移植後】味覚を失ったことに気づいた
造血幹細胞移植において、食事の自由度は低い。
入院中は病院側で管理されているものの、密封された個包装でない食品の持ち込みやグレープフルーツ系が禁止されるなどいくつかの注意事項はありました。
それでも食い意地が張った私は、移植前「最後の晩餐」にカップラーメンでもいいからがっつりラーメンが食べたい、という食欲の消えない患者でした。
(入院してから約2週間経過したこの頃は、たこ焼きとかラーメンとか濃い目の味付けに飢えていたのです。)
そして、移植後1週間ほどの絶食期(口や消化器が炎症して何も食べられなくなってしまう)やっと最初の晩餐にありつけそうに回復してきた頃。
自分の味覚が思っているものと違うことに最初に気づいたのは、あたたかいそうめんを口にしたときでした。
良いおだしの香り。薄い琥珀色の液体。
なのに、塩分やうまみを全く感じない。薄ら甘い汁に浮かぶそうめん。
匂いがだしの味を想像させるのに、舌に広がる違和感・・・
あったかいそうめんで感じた違和感は、次の日も続きます。
そうめんをクリアした次の日に現れたのは「具なし茶わん蒸し」と「たまご豆腐」という生き別れの双子のようなメニュー。
しかし、どちらもぬるくて砂糖を入れ忘れたプリンのように感じてしまう。
私が失ったのは「塩味・うま味」。かわりに鋭く感じる「苦味」。お茶が渋いぜ。
これはひとによって違うと聞きました。
あるひとはすっぱいものがだめになり、あるひとはチョコレート以外受け付けなかったとか。
だがしかしこれで私の食い意地が負けるわけにはいきません。
何がだめで何ならいけるのか。食事に出るものを片っ端から試食しました。
フルーツOK。味噌汁わからん。ごはんOK。緑茶渋いけどOK。ゆでたまごの塩わからん。牛乳OK。水おかしい(硬水のように感じる)。
でも、味覚の再教育だと思って、あれこれ試してみたら意外と楽しかったです。
異世界に来たノリで自分なりの食べられそうなものを探してみるのは気分転換にもなるのでおすすめです。
そして、現在私の味覚はほぼ正常に戻っています。
甘じょっぱいもちもちしたものが前より大好きになっています。