骨髄異形成症候群と保険
骨髄異形成症候群は、がんではない。
そう判断されることが、がん保険ではあるようです。
造血幹細胞移植(骨髄移植)は、手術ではない。
そう判断されることが、医療保険ではあるようです。
たしかに、主治医からの説明の際に、白血病との違いを伺っています。
まだ未熟な血球たちが血液として送り出されるため、不完全な状況であると。
そして「手術」ではない理由。
それは移植がメスで切除したり縫合したりすることがないからだと、私の入っていた保険会社からは説明を受けました。
実際に、移植自体は大静脈のカテーテルから輸血のように点滴スタイルで行われました。
移植中は普通に意識もあるので会話もできます。
正直これは思ってたのと全然違った・・・
高額医療の制度はあるとはいえ、入院中の出費は多岐にわたります。
一人暮らしだったので、その間の家賃や基本光熱費。
そして衣料品のそろえや看護に来てくれる家族の交通費、
無菌室に入ってからは、ATMにも行けませんし、自分のことを自分でするためにオンライン口座も必要になりました。
退院してからだって、ちょっと特殊なこの治療は新しい布団や新しい着替えなどいろいろ準備が必要です。
そろそろわたしも保険を見直したいなーと思っています。
まだ新しい医療保険には入れないかもしれませんが・・・
入院というハプニングはいきなり発生することがわかったから、今のうちにきちんと確認しておこうと思う今日この頃です。
【造血幹細胞移植後】世界から音が消えない日
あったかくなってきたので、ちょっと不思議な話を。
1週間の抗がん剤投与中のことだったと思います。
かすかに音楽が聞こえました。クリスマスソングとか、コンドルは飛んで行くとか、J-POPなんかがずっと流れているのです。
ふだん院内で流れているオルゴールのような環境音楽は、隔離されている移植室までは2つのドアを隔てて聞こえません。コンタクトをはずしっぱなしなので、TVもつけない日が続いていました。なのでちょっとほっこりしたのです。
そこで巡回中の看護師さんに、聞いてみたのです。
「今日は慰問コンサートかなんかですか?ありがたいですね☆」
その時の看護師さんの困惑した表情。忘れられません。
「聞こえているのはどんな曲ですか?いつからですか?」
さとりました。私は余計なことを聞いてしまった。
それは私以外のひとには聞こえない音。やばい、変なひとと思われた。
そのあとしばらく巡回の看護師さんには音のこと、まだ聞こえます?とやっぱり聞かれ続けました。。。
でも全然怖い感じじゃなかったんですよ。ケチャとか民族音楽に演歌、J-POP、洋楽ごっちゃまぜの有線みたいだったから。
看護師さんにやべーやつだと思われるほうが心配でした。
なんなんですかね。ストレスなのかな。やっぱ。
じゃあどうしたのか。
イヤホンで聴きたい音楽流しながら本読んでごろごろしてました。
聞かされるなら選曲権くらい欲しいもの。
【造血幹細胞移植後】味覚を失ったことに気づいた
造血幹細胞移植において、食事の自由度は低い。
入院中は病院側で管理されているものの、密封された個包装でない食品の持ち込みやグレープフルーツ系が禁止されるなどいくつかの注意事項はありました。
それでも食い意地が張った私は、移植前「最後の晩餐」にカップラーメンでもいいからがっつりラーメンが食べたい、という食欲の消えない患者でした。
(入院してから約2週間経過したこの頃は、たこ焼きとかラーメンとか濃い目の味付けに飢えていたのです。)
そして、移植後1週間ほどの絶食期(口や消化器が炎症して何も食べられなくなってしまう)やっと最初の晩餐にありつけそうに回復してきた頃。
自分の味覚が思っているものと違うことに最初に気づいたのは、あたたかいそうめんを口にしたときでした。
良いおだしの香り。薄い琥珀色の液体。
なのに、塩分やうまみを全く感じない。薄ら甘い汁に浮かぶそうめん。
匂いがだしの味を想像させるのに、舌に広がる違和感・・・
あったかいそうめんで感じた違和感は、次の日も続きます。
そうめんをクリアした次の日に現れたのは「具なし茶わん蒸し」と「たまご豆腐」という生き別れの双子のようなメニュー。
しかし、どちらもぬるくて砂糖を入れ忘れたプリンのように感じてしまう。
私が失ったのは「塩味・うま味」。かわりに鋭く感じる「苦味」。お茶が渋いぜ。
これはひとによって違うと聞きました。
あるひとはすっぱいものがだめになり、あるひとはチョコレート以外受け付けなかったとか。
だがしかしこれで私の食い意地が負けるわけにはいきません。
何がだめで何ならいけるのか。食事に出るものを片っ端から試食しました。
フルーツOK。味噌汁わからん。ごはんOK。緑茶渋いけどOK。ゆでたまごの塩わからん。牛乳OK。水おかしい(硬水のように感じる)。
でも、味覚の再教育だと思って、あれこれ試してみたら意外と楽しかったです。
異世界に来たノリで自分なりの食べられそうなものを探してみるのは気分転換にもなるのでおすすめです。
そして、現在私の味覚はほぼ正常に戻っています。
甘じょっぱいもちもちしたものが前より大好きになっています。
【造血幹細胞移植後】髪の毛が生えていく(ふわふわ期)
移植から約1年後くらいのある日。
ウイッグのおさまりが浮ついた感じになってきて、ついに!!
2年ぶりくらいの美容院に行くことにしました。
とはいえ、入院前に行っていたところはかなりのご無沙汰。
気を使わせてしまいたくもない。
入院するとも言ってない(退院時期が未定だったので)。
迷った挙句、正直に担当者の方に電話で経緯を話しました。
そしたらやっぱりプロの方は慣れていらっしゃる。。。
個室を用意するかとか、注意事項はあるかとか確認してくださいました。
もしなんていおうか迷ってる方がいらしたら、ストレートに伝えてみてください。
美容院によると思いますが、そのお店ごとの対応案をお持ちかもしれません。
私の伝えた内容は、病状以外にこんな感じでした。
- 髪質が生え変わったため剛毛→猫っ毛になり、くせも強くなっている
- カラーリングやパーマはしばらくできない
- 前髪等、一部まだ薄くなっているので今後それをカバーする感じで伸ばしたい
髪が抜けるときの見た目でカバーしたいことやほかのひとの視線に辛さがあるかたは、それも伝えてみたらいいと思います。
私は「抜けたら生える」そう思っていたこともあるし、ウィッグも楽しめました。
ウィッグからセットが必要になったときはちょっと名残惜しい気がするほどに。
入院して最初に同室になったマダムが
「私は70代でここ2回目だけど、髪なんて退院したら生えてくるのよ」
って言ってくれたのがあったからかもしれません。
ありがとう、マダム。ほんとに生えましたよ。
ここで私の髪の毛がいまモーモーに生えて、梅雨の湿度でぶわぶわになってることを伝えたら安心してくれる人もいるのだろうか。
chimericoがウィッグでお世話になった「リネアストア」さん
【造血幹細胞移植後】髪の毛が抜けていく(つるつる期)
完全に髪の毛が抜けたつるつる期。
個人的にはうっすらほわほわな毛が生え始めるまで約半年。
ちょっとうれしかったこと
- 抜けきったことでお風呂が楽。乾かすのも楽。
- 抜けきったことでコロコロ掃除がいらなくなった。
- ウイッグを探す楽しみ。
ちょっと大変だったこと
- お風呂で天井から落ちてくる水滴や浴槽の壁がびっくりするほど冷たい(冬)
- 直射日光が痛い
- 強風に弱い。冬の風は攻撃力を感じるほど冷たい。
- 物が当たると思いのほか痛い
- 姪っ子や甥っ子にウィッグをとられて逃げられる
- メイクしようと思ったがどこまで額かわからない
- メイクしようと思ったが髪の毛以外にも眉毛やまつげがないので途方に暮れる
うーん。頭が守られていないことに対するデメリットは大きかったですが、それまで抜け続ける髪にストレスだったので、抜けきった時は楽になった開放感が勝りました。
ほかにもお風呂場で鏡に映る自分を認識できない(ゴラムそっくりで毎回びっくりする)とか、見た目から生じる問題は多々ありましたが、、、
ウイッグかぶってニット帽なんかかぶれば ほぼそれとわからなくなります。
※ニット帽ごとずるむけることがあるので、帽子のフィット感はお出かけ前に要確認!
ウイッグは医療用で人毛を使ったものだと高品質高価格ですが(chimerico調べで病院にあるものだと7万円~、中心価格は10万円以上)、なにせすでに医療費やら生活費やらでお財布事情は厳しいところ。
ネットで販売しているおしゃれ用のウイッグ(1万円くらいの価格帯)でも個人的には問題なかったです。最近のは頭皮っぽいシリコンがついてるのもあって、すごく自然。
頭皮っぽいものはほんとおすすめ!椅子に座って上から見られてもわかりにくいよ!
そして夏のウィッグは暑いです。蒸れます。洗い替えも買っておくのがベターです。
chimericoがウィッグでお世話になった「リネアストア」さん
【造血幹細胞移植後】髪の毛が抜けていく(抜け期)
入院中、抗がん剤治療が始まって1週間ほど経った頃。
全身の毛が抜け始めました。
私の場合は、体の下のほうから抜けていったように感じます。
あれ?すねがつるっとしてない?な感じで始まり、アンダー、腕、髪は襟足からツーブロックでロックな時を経てつるつるに。
ちなみに眉毛とまつ毛が最後だった。
抜け始める前に面倒だから丸刈りにしようと院内の美容院に行ったところ、美容師さん曰く丸刈りは余計大変とのことでストップが。
マルガリータの場合、抜けたときこまかい毛になって散らばってしまうので2~3cm程度長さを残したモンチッチ風な髪形が処理しやすいらしい。その通りでした。
シャンプーで洗えど洗えど抜け続け、いつ洗いやめたらいいのか風呂場で途方に暮れ、時間切れ(お風呂の時間は決まっている)。
お風呂あがりに拭けども拭けども(以下略。
お掃除をしてくださった方には感謝しかありません。ご迷惑をおかけしました。
モンチッチ風でこの状態。こまかい毛だったらもっとチクチクしていたことでしょう。
枕元には毛が散らばるので、コロコロの出番は多めです。
自分の頭(発生源)にコロコロしていたら看護師さんに止められました。
でもやる人は意外に多いらしいですよ。
季節の移り変わりがわからない
今週のお題「外のことがわからない」
これは本当はコロナウイルスの自粛中のことなのでしょうけれど・・・
私たちのような移植を受けた患者の入院日数は、数か月に及ぶことが多いので、本当に「外のことがわからない」。しかも院内から出ることはできず、窓のあかないクリーンルームで過ごすことが多いので外の気温もわかりませんでした。
お花の持ち込みもできないから、旬のものは周りに何もないのです。
一番困ったことは、入院中に季節が変わってしまったこと。
私が入院した時には寒くてコートを着て病院に行ったのですが、退院するときにはコートはもう不要の季節。
病人っぽい格好でいると弱った気持ちになるのが嫌で、普通の服が着たかったのですが、免疫力がないため退院後すぐには電車や密になる場所に買い物は行けません。土の多い場所や海岸線もダメ。
自宅待機一択になるので新しい服を買いに行けなかったのです。
しかも体のサイズもだいぶ変わってしまって、コンプレックスのかたまり。
そんな時、通販で服を買うのが楽しみで、宅配業者さんにはとってもお世話になりました。
コロナウイルスの影響下は、少し退院後と似ています。できることとできないことが頻繁に入れ替わる。
できないことに目を向けるより、新しい工夫が必要な時期なのかな。